読んだ本

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ベストセラーの『ケーキの切れない非行少年たち』でお馴染みの宮口先生の去年の新書です。
「非行少年たち」は犯罪や非行の原因に、教育の中で見逃された発達の遅れ、先天的な知能の低さなどがあることを示して話題になりました。
今回読んだ本はとりわけ境界知能に話題を絞って、境界知能への対処法とその研究の現状についてコンパクトにまとめられた本でした。

学んだこと

  • 定型者、知的障害者の間、IQで70〜85あたりの人たちが発達の遅れなどで一般的に身についているとされる能力が身につかないため、困ることがたくさんある。
  • 正しいトレーニングを行えば能力的に伸ばせる部分はたくさんあるため、発達の遅れがあっても定型者と同様の能力を獲得できる場合もある。
  • 青空教室など特別な教育が必要であると認知されている知的障害者ほどに、境界知能の子供に対しての専門教育を行う意識は、研究は、まだまだ改善の余地がある。

感想

本書を読んで、これまで日本で教育を受けて過ごす中でできるようになったことが、できて当たり前のものではないというか、できて当たり前のことがなぜ出来るのか、と考えるようになりました。
読み終わって、希望後持てた部分と、希望が持てなかった部分がそれぞれありました。
希望が持てた部分は、たとえ発達に遅れがあっても正しいトレーニングができれば定型者と同様の発達に導くことが一定可能である、ということでした。
反対に、希望が持てなかった部分は、その教育を実際に境界知能の子供に施すことが現状だとかなり難しそうだ、ということでした。
本書の最後の方でも、文科省は境界知能の子供に関してはこれまで通り教室の中で包括していくスタンスを取っていることが紹介されていました。
教員の皆さんはブラック労働がお馴染みで人手不足も重なってリソースがない状態。追加で境界知能の子供用にカスタマイズされた教育を届ける余裕なんてないと思います。
文科省のスタンスも、リソースがない中であると思うので理解はできます。そうするしかなさそう。
加えて、本書の3章で紹介された実際の教育の仕方についても、教育者の方々がどう捉えられたのかは分かりませんが、俺はかなり高度なスキルだと思いました。専門的な教育をむしろ大人の方が受ける必要がある。
個人的には、このような状況を前に進めるには、教科の先生としての側面よりも、発達のエキスパートとしての側面をより伸ばす方向に、教員のスキルセットが変わる必要があるんだろうなと思いました。
近年では、子供に一台ずつタブレットを配りました。あれも本来は個別最適化された教育を届けるための最初の一歩だったんだと思います。あれさえあれば、ゆくゆくは子供一人ひとりに最適なカリキュラムを提供できる可能性が出てくる。
そうすれば、先生方のリソースの最適化も進み、多様な個性を持った子供がいるクラスの空間に、全員の能力、学力を最大限伸ばせるような教育を提供できる可能性がある。
俺がタブレットを配り始めた、というニュースを聞いた時に浮かべたのはこういう未来でした。
世界、生活が大きく変化する中で、教育はこれからどう変わるのか、などということをこの本を読んでいて考えずにはいられませんでした。