読んだ本
中田浩二の「個の力」を賢く見抜く観戦術 : サッカーが11倍楽しくなる! / 中田,浩二,1979-(2016)
観戦術の話ではない
タイトルからチーム戦術の話ではなく、個人戦術の観戦の仕方にフォーカスした観戦術の話だと想像して読み始めました。しかし、読んでみたところタイトルから想像する内容とはかなり違う内容で占められた本でした。
どちらかと言うと『中田浩二のサッカー語り』とか『中田浩二のサッカー人生』のようなタイトルが相応しいような、自伝、あるいは対談やエッセイのジャンルに入れた方が良い内容だったと思います。
全体通して中田浩二さんの現役時代の時の話が中心です。序章から2章までにはラベルに書いてある「個の力」の話を少しだけしてますが、気を抜くと「すぐにあの時はこうだった...」という話が始まります。
"観戦術"と見た時に情報として得られると想像するような、観戦する時にどこをどう見るか、みたいなハウツーは、「セットプレーではボールではなく集まっている人を見ましょう」「一人気になる選手を見つけてよく観察してみましょう」くらいでした。
大前提、書籍という媒体が動的な競技のサッカーについて説明するのに不向きだってのはあります。だとしても、この本はフィールドに選手を並べた図すらないので、サッカーを見慣れていない人が読んでサッカー見てみたくなるような、競技としてのサッカーのどの部分が戦術的に重要で、それらをどう解釈して楽しむのがおすすめなのか、みたいな話はほとんど出てきません。
中田浩二さんのファンの方や、発売当時のサッカーファンはこの本の内容を、まだ頭に残っている実際の試合の映像と照らし合わせながら楽しめたかもしれませんが、俺みたいな10年後のサッカーファンには伝わりづらい内容だったと思います。
「個の力」はふわふわしたまま
この本は当時の日本代表選手や鹿島アントラーズの同僚の選手の話を中心に、それぞれのどこがどのように優れていたのかを話していくんですが、それぞれが断片的でまとまっていません。
「個の力の見抜き方」が目新しくて何か新しい何かを得られると期待して読んでみましたが、「この時にスペースを捨てて出ていけるのはとても上手い」「うまい=アドリブ力があるということ」「劣勢に強い選手はいい選手」などが並んでいて、何かを得た気はしませんでした。
なぜタイトルと内容がズレてしまったのか
推測ですが、中田浩二さんで観戦本を出版しようとして企画が立って、中田浩二さんに話を聞きに行ってみたところ、競技において普遍的な戦術の話よりは、中田浩二の個人的な提言と思い出話が中心になってしまった。で、後から書き起こし作業に取り組む時に、企画趣旨からはかなり乖離してしまったが、「個の力を見抜くための術」として補助線を引けば筋が通らなくもないし、あくまでタレント本なので筋が通っているかどうかよりはファンが喜ぶかどうかを優先してそのまま通した、という経緯があったんじゃないかなと考えてます。
その後10年経って、「観戦術本をたくさん読めばサッカーのことがわかるんじゃないだろうか!」と勇んで買って読んでみた俺が主旨が違いすぎて困ってしまった、という感じではないかと。当時の人たちは当時の空気の中で楽しくやっていたわけで、それをめくって「期待外れだった」と感じている俺の方が明らかに愚かです。