はじめに
こんにちは。ちょらんといいます。普段は配達員したりWeb開発をしながら、趣味でサッカーを見ている人です。
普段はJリーグ、プレミアリーグを中心に見てます。Jリーグは2019年の片野坂さんのトリニータに惹かれてJ1を見るようになり、気づいたら大分のサポーターになっていました。大分のサポーターなんですが、ここ2~3年の大分トリニータのチームの状況はあまりに見ていて辛いものがあります。
なので、気分転換も兼ねて、片野坂監督の新たな挑戦であるロアッソ熊本でのお仕事を拝見していきたいと思います。手始めに、ロアッソ熊本の百年構想リーグのプレーオフラウンドまでの20試合を見てみます。片野坂監督とロアッソ熊本の選手スタッフの皆様がどのような取り組みをしたのかを拝見し、自分としてもトリニータをより深い視点で見るための糧にしたいです。
私が知るロアッソ熊本さんについて
大分トリニータがJ2で戦い始めてから、直接対決で年2回、その他気まぐれで見た他の試合で何試合か合わせて拝見しています。特にトリニータと同じ九州のクラブということもあり、両サポーターの熱量がかなり高い対戦になりがちだったのをよく覚えてます。
去年までのチームは、前監督の大木さんの"大木サッカー"が特徴的でとても魅力的なチームだなと思ってました。覚えている範囲で、かなりボールを持つんですが、選手がボールホルダーを追い越したり、少しアバウトでも縦方向にチャレンジをしたり、ちょうどこれを書いている今日W杯優勝したスペインのような静かな保持とはまた違った、ダイナミックでよく走るパスサッカーという感じのチームだった記憶です。初期位置が中盤がダイヤモンドの343でまずそこから今のJリーグではユニークでした。2022年はプレーオフまで残って京都との直接対決までたどり着いていて、その過程でトリニータも下平体制一年目で昇格を目指して、かなり悔しい負け方をしているので印象深いです。
片野坂監督について
ここからは素人の拙い持論を多分に含みますが、これまでの片野坂監督のチームづくりは、かなりロジカルに戦略を組み立てることが特徴だったかと思います。先述のトレンドを把握して"今一番勝てるサッカー"を組み立て、その年のチームに落とし込むのが特徴でした。
例として、まず第一次片野坂政権が19年シーズンにJ1でブレークした時の代名詞は"擬似カウンター"でした。初期位置3421の配置から415(235)の保持用の陣形に可変し、自陣深くGKを含めて繋ぎながら、相手がプレッシングで食いついたら空いた敵陣のスペースにボールを落とし、カウンターとほぼ同じような状況を作る。守備になったら541の守備ブロックを自陣に敷き、人をかけて粘り強く守る。これは人件費がJ2中位レベルの選手層でJ1で生き残るために、自陣で長く繋ぐことで強力なアタッカーのいる相手の攻撃の時間を奪い、守備では皇帝・鈴木義宜を中心にミルフィーユのように人垣を築いて守る。これは19年シーズンのJ1で勝ち点を積むためには最良の戦略で、実際に選手がそれを遂行できたので優秀監督受賞まで辿り着きました。20年はここからさらに上積みをして可変のパターンを増やしたりしながら12位でフィニッシュして良いシーズンにしましたが、21年は相次ぐ主力の離脱も相まって築き上げたチームが上積みを発揮できず、厳しいチーム作りを強いられてました。
また、第二次片野坂政権での25年シーズンのチームのテーマは「いい守備からいい攻撃」でした。片野坂監督はこの年、「去年の岡山(24年昇格)のような手堅く守れるチーム」の構築を目指していたと語っておられました。25年のトレンドとしても、極力失点を減らしセットプレーで得点を稼ぐ、プレミアリーグを奪ったアーセナルのようなチームが増えた印象はありました。ロングスローが流行していたのもこの一環。"ボール持ったら負け"のような雰囲気すらあったと思います。そのトレンドの中で、ミドルブロックで構えて失点をしないことを大前提としてを掲げて、シーズン折り返しまでは被ゴール期待値はリーグで下から2番目で中位とそれなりの戦績ではありました。24年シーズンの"シームレス"も当時のトレンドからの引用です。
これらのことから、片野坂監督は勝利から戦術のトレンドを踏まえてチーム作りをする、かなりロジカルに戦い方を決めていく監督である、と考えていました。これは長短どっちも出るわけで、理論派ゆえに戦局の整備と戦略の立て方に素晴らしい手腕を感じる一方で、選手をメンタル面で一つ上の状態に仕上げた感覚は歴代のチームを見てても感じたことはなかったです。良くも悪くもクールなチームができることが多かった印象です。
片野坂監督と就任にあたって不安だったこと
惜しくも降格となった2025年シーズンの終了後、前任の大木さんの退任から片野坂監督の就任の発表があり、一人のファンとしては同じ九州、しかもJ3からJ1までの昇格の実績がある片野坂さんとしては再出発とも言えるチャレンジで、ワクワク感がとてもありました。ロアッソのファンの方からもかなりポジティブな人事と見ていただいているようなコメントが多かったような気もします。
一方で、私としては片野坂さんの新たな挑戦に対するワクワク感と同じくらい、直近の第二次片野坂政権での低迷からの解任までの経緯、それと前任の大木監督のサッカーと片野坂監督の趣向の遠さが不安でした。
片野坂監督がブレイクした16~21年までの第一次片野坂政権では、バルサでの爆発から興ったペップ式の戦術トレンドをJリーグでいち早くキャッチし、それをJ3初年度から粘り強くチームに落としこんだことで一気にJ1まで駆け上がり、19年シーズンのシーズン9位とそのシーズンのJリーグの優秀監督賞受賞までたどり着きました。一方でその後21年にトリニータが降格してからガンバ大阪、2回目の大分トリニータと苦い結果が続いており、過去に築き上げた先駆的な戦術家としての評価や人柄への評価は揺らがない一方で、モチベーターとしての側面や結果に直結するチームづくりの面では疑問符がつかざるを得ないのがガンバ大阪時代以降の片野坂監督だったかと思います。
トリニータは第二次片野坂政権で24~25シーズンを降格争いをして過ごしました。どちらもシーズン中盤にかけて状態が落ちて、終盤は降格争いのパターンで、片野坂監督は25シーズンの途中での解任となっています。24シーズンは"シームレス"を掲げモダンサッカーを大分に植え付けようと挑戦したものの、特にシーズン中盤で勝ち点を重ねられず、終盤は5枚の最終ラインを中心に失点をしないことをベースとした降格争い用の戦い方にシフトし、降格を回避。25年シーズンは直近のシーズンの5バックからミドルブロックをベースに構築し前半戦被xGリーグ2位の堅守を実現するも、リーグ最下位の得点力を解消できず、リーグ戦終盤を前に解任。トリニータ最大と言っていい功労者との苦い別れとなってしまいました。
あわせて、監督のサッカー観もかなり異なるように見えていてそれも不安材料でした。私が覚えている限りのカタノサッカーと大木サッカーはこれのある意味で対極にあるように思えます。大木サッカーはかなり異質だったかと思います。国際的にスタンダードなやり方を素直に吸収するタイプの監督が、それとは真逆で我流の教科書を胸に抱えているタイプの監督のもとでやってきた選手たちを前に、何をどう教え諭していくのか。これは悪い方に出ると、彼らが去年まで持っていたアグレッシブさなどのいい部分が消えてしまうのではないか。私が「ロアッソ熊本に片野坂監督が就任」と聞いたときに感じたのはそのような不安でした。片野坂さんは大木さんの取り組みの延長に位置付けられる人選なんだろうか?というところです。
開幕節vs山口(H)
試合データ
https://www.football-lab.jp/kuma/report?year=2026&month=02&date=08
開始前
DAZNの中継はスタメンの段階で352(3142)予想。大木さんは343(3133)だったのでこの時点でかなり片野坂さんが自分のやり方をかなり素直に落とし込んだのかなと思いました。思い出すといつも開幕戦は片野坂さんの色がはっきり毎年出るので、いつものカタさんだなあと安心した気持ちになりました。
対する山口は3421。3バック同士の対戦。監督は富山でJ2昇格を成し遂げた小田切監督。サブにはトリニータサポーターとしてはお馴染みのスーペルゴラッソ小林成豪。
この日、前半の15分くらいまで雪がすごかった。熊本で積雪ってなかなかなさそう。私も九州にかなり長く住んでましたが、こんなに降ってるのを見たことはなかった気がします。積雪の試合って初めて見ましたが、ブーツに雪がついてコントロールが少し難しいのかなと感じる場面がありました。
熊本がボールを握ってコントロールできた前半
前半は熊本のペースでした。熊本がボールを握ってコントロールできた。特に16-30分は保持率7割でかなり高く出てます。特に前半17分のシーンは準備してきたものが見えたシーンでした。相手の523ミドルブロックの左側ボランチの脇の空間。W杯で日本代表がよくやられていたこの空間に飯星が瞬間的に降りて、食いついた左CBの裏に大本が走って決定機。クロスが合わなかったですが降りる動きからの空いたスペースを見つけて飛び出すまでがスムーズで、この局面を想定して準備してきたのを感じました。
握れた要因として、ゴールキーパー含めたビルドアップ、特に佐藤史騎のキックが冴えてたところもかなり大きかった。覚えている限りテンポ良く繋げるところは大木サッカーからの継続で、昨今はJリーグもかなりプレースピードが速いですが、それでも勇気を持って繋げるのでみてて気持ちがいいです。
後半入り、相手の保持をなかなか止められなかった
スタッツでも見ても45-60分は少し保持が山口寄りで試合を握られてたように見えます。山口が自陣からのビルドアップの局面で、シャドーの選手がボランチの横まで降ろすようにしたことで、中盤の真ん中の位置で瞬間的に数的優位を作れてます。ここにボールが入ると中央で前が向ける、出し手の顔が上がるので、熊本はここを経由されてしまって前進されちゃってました。特に1点目の直前の54分のピンチが象徴的です。
それでもこの時間帯に、前半もビルドアップの出口として使ってた3トップの斜め後ろ、2ボランチの列の脇のスペースから1点目は大本の飛び出しに飯星からの長いパスで一点が取れたのは大きかったと思います。引き込まれたところを長いパスでひっくり返して、WBとCFの2枚で取り切っちゃう感じは片野坂大分を見ているようで少し熱くなりました。
守備の修正で掴んだ攻撃から2点目
握られてる中で1点を取った熊本は前半60分あたりの永井の投入のあたりから守備の仕方が少し変わったように見えました。おそらく、松田永井の両翼がミドルブロックの局面で相手WBに縦方向にアプローチする、降りる山口のシャドーに対してもっとついていく、あたりを意識づけた、つまりは最終ラインからも人をもっと掴みに行くように修正したんだと思います。守備で当たりに行く時の基準点がはっきりしたので、相手ビルドアップで持てていた時間と空間がかなりタイトになって球際が作れるようになりました。球際が作れれば奪えるボールも増えるので、この時間、61-75分の熊本はボールを握る時間が増えました。
そこから72分に2点目。ここもシャドーの斜め後ろの空間で飯星が受けて、素早く山口左CBの裏のスペースへ流して、反応した半代からのクロスに最後は左IHの三島。ひっくり返った瞬間の敵陣を見ると松田が少し下がってきているので、1点目のようにWBが必ず狙うのではなく、チームとしてこの空間が空くことを共有できていたから生まれた得点だと推測します。空いてる空間は誰が取っても良い、突く場所さえ見えればあとはアドリブが効く。チームとしての取り組みが見えるいい2点だったと感じました。
2点目の直後、中継のカメラに抜かれた片野坂監督の冷静な表情はブラジル線のアンチェロッティみたいでよかったです。
個人的MVP
この試合、76分のビッグセーブも含めて、GK佐藤史騎が個人的MVPです。保持では中盤にずばっとパスを刺す、ピンチはビッグセーブでチームを助けてくれる。カタノサッカーのGKとして抜群の活躍だったと思いました。
終わりに
これから、できれば開幕までに百年構想リーグの20試合を振り返ります。試合前のインタビューで片野坂監督は「夏明けのJ3リーグに繋げる」としていたので、この百年構想リーグの成績よりは、百年構想リーグで何を積み上げることができたのか、がより重要です。就任初年度の半年を自由に使える、次のシーズンの昇格のための半年。すでに日程は終えてますが、観測するものとして、これからどのようなものが見られるのかとても楽しみです。
#ロアッソ熊本 #片野坂知宏 #サッカー観戦 #サッカー観戦メモ